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書き散らした小説置き場。剣と魔法のファンタジー他いろいろ。
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 アカネが敵の手に落ちたと報せを受けた時、ブドウの目の前の景色が一気に色褪せた。急速に狭まる視界、浅く早くなる呼吸。後悔と自責が胸の内を駆け抜ける。

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 先程の名残の遠雷が低く響いた。黒い雲は急速に散らばり、今日最後の残光が草原を紅に染め上げる。赤い草が揺れる様はまるで、昼間に流された幾多の血を飲み干してなお、まだ足りぬと大地が訴えるかのようだ。

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 その村はまるで、山肌にしがみついた昆虫の蛹のような姿をしていた。正午を過ぎてもなお霧のたゆたう谷の狭間。耳に痛いほどの静寂に包まれた石造りの簡素な建物群はまどろんでいるかのような、或いは既に抜け殻と化してしまったかのような。石くれだらけの峠をようやく越え、村を見下ろしたアサザが深く息を吐く。

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 また一つ、鐘が鳴った。乾いた音色が高く澄んだ空へと昇っていく。先日の戦で犠牲になった命の数だけ、打ち鳴らされる弔いの鐘。その響きが運ぶのは死者の魂か、或いは彼らの眠りが安らかであるよう祈る人々の心か。

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 山道の途中で崩れ始めた天気を気にする余裕など、なかった。

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 冬晴れの王都は活気に包まれていた。絶えることのない人波、行き交う荷車。どこかおっとりした表情で歩く平服の都の住人に混じって、自警団の無骨な鎧姿が目立つのはここ最近の情勢からして仕方のないことだろう。彼らのおかげで商売が繁盛しているのもまた事実だ。

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 凍てつく皇都の寒気は、未だ緩む気配もない。北風に翻る旗は黒地に深い紫の縁取りがなされた弔旗だ。戦死者の合同葬礼は五日前に終わっていたが、全員の埋葬はまだ完了していない。葬祭殿が空になるまで、旗は半旗のまま掲げられるのが通例だった。

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 眩い光が瞳を灼いた。

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 分からないことが多すぎる。

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 中立地帯の夜は長い。

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 国王軍が近づいてくる。日に日にその数を膨張させながら。

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 声が、聞こえる。

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 風の軌跡が、草原に波紋を描いていく。藜の肩越しに見えるその景色は兄と共に渡った海に似ていると、蓮は思った。

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 早春の草原に闇が落ちるのは早い。見る間に薄れゆく黄昏の帳を透かして、疾駆する白い一団が近づいてくる。ぐんぐん距離を詰める彼らの馬はどれも口端に泡を散らせていた。それでもなお足りぬとばかりに、先頭の一人がさらに鞭を入れる。必死の形相で速度を増した馬が悲鳴のような嘶きを上げた。

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 翌朝、『戦士』の本隊は宿営地を撤収した。およそ半日で天幕の群は消えてなくなり、代わりに草の上には無数の円が残される。喧騒の真ん中にある一際大きな丸、指揮所の天幕跡地の傍らで蓮と梓は兵たちがそれぞれ自分の仕事をこなすのを眺めていた。天幕暮らしでは移動はごく日常のことだ。兵たちは手慣れた様子で円卓や机や天幕の骨組みを組木細工のように器用に馬車に乗せ、ごとごとと隊列の所定の位置へ向けて牽いていく。北を目指すための編成の都合上、この辺りは最後尾の荷馬車の待機場所になっているらしい。気がつくと周囲は荷車だらけになっていた。

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 それは明け方の月明かりにも似た、うたかたの残像。触れたところから崩れていく儚い砂絵のようなその残滓を掌から零さないよう、蓮は強く指先を握り締めた。宵と暁の境目の、澄んだ冷気が頬に心地良い。せめてあと少しだけ、夢の中に漂っていたかった。

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「右翼弓兵隊、弾幕薄いぞ! 相手を休ませるな。目のいい”山の民”と同じ箇所に狙いを集中しろ。中央、左翼は戦線維持、前進。救護隊は移動後の陣地内に残された怪我人の回収を急げ!」

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 長い夢を見ていた。ひどく儚い、硝子細工のような夢を。

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 深い紫紺の空に、今宵は月の影すら見えない。

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 嘘だろうと、思った。

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小説は基本ドシリアス。
日常は基本ネタまみれ。
文体のギャップが激しい自覚はあります。ごめんなさい。
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小説とはイメージ違うだろうなぁ
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