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書き散らした小説置き場。剣と魔法のファンタジー他いろいろ。
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撥と鳴るは四条の弦
凛と響くは夭傾の声
紗よりも薄き瞼を伏せて
幼き法師は謳を紡ぐ

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苛烈な戦
無限の欲
別離の涙
秘せし恋
此世の幾多の理を
無常の響きに徒々載せて

風が水面を揺らすが如く
市の衆生は振り返る
今宵は新月 朔の闇
月陰に乗じし墨染に
魅入られしは逢魔が辻

華奢な指は低き基調
清澄な声は高き韻律
幾重に巡らせし音色の結界の内
盲目の法師はふと笑う
果たして謳っているのは
己なのか 琵琶なのか

視えぬ故に見えしもの
瞼の裏の闇に舞う
異形の芸妓が甘き声
琵琶を鳴らせ 我を奏でよ
常夜の業を示し給う

法師は戦を知らぬ
愛も 欲も 哀しみも
故に謳う 真実の顔で偽りを
涯無き闇を道連れに
己より歳経た琵琶を爪弾き乍ら

若し光を得ることで
此の闇を 琵琶を失うならば
迷わず否と拒むであろう

闇は母 琵琶は父
糧たる衆生を誘うため
法師は今宵も謳を撒く

幼き心に絡むは 不視の弦
未だ細き腕には 不死の琵琶
月隠りの夜 人影の群
永久の闇に抱かれし 父子の旅路



<2007年8月12日>



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