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書き散らした小説置き場。剣と魔法のファンタジー他いろいろ。
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「やあ、今年もいい倖せがとれたねぇ」

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「とれたって……野菜や果物じゃないんですから……」
 広い広い青い空の真ん中で。降り注ぐ金色の太陽の光と、袋へ吸い込まれていく倖せの粒子に目を細めながら、主人はご機嫌な様子で下をのぞき込んでいます。
「お礼なら、こうやって十分もらってるよね?」
 だから気にしなくていいよー、と聞こえるはずもない相手に言っている主人に、私は適当に相槌を打ってあげます。長いつきあいですから、あしらい方も十分に分かっています。
「では、そろそろ戻りますか」
「そうだね。袋もおなかいっぱいになったようだし」
 主人が袋の口を閉じ終えるのを待って、私は走り出しました。私の首と橇につけられたおそろいのベルが、きれいなハーモニーを響かせます。
「そういえば、ニコル」
「んー?」
「セント・ニコライという人は、確か子どもを守護する聖人の名前でしたよね?」
「うん。そうだよ」
 後ろのニコルの気配がやわらかくなります。これは、笑っているときの気配。長いつきあいですから、顔を見なくても分かってしまいます。
「だからサンタは子どもにプレゼントを配るんだ。子どもが好きだからね」
 つられて、私もつい笑ってしまいました。
「では来年までに、子どもに受けのいいプレゼントでも作りましょうか。あのぬいぐるみじゃあ、素直な子じゃないと納得してくれませんよ」
「えー?僕はけっこう気に入ってるんだけどなぁ。一番うまくいったのを特別にあげたのに」
「いつもはものをあげないのに、慣れないことをするからですよ」
 まだ納得がいかない様子の主人に笑いながら、私は空を翔けます。4本の脚に、主人の仕事の手伝いができることの誇りを込めて。
「でもニコル、今年もお疲れ様でした」
「ありがとう。トーンこそ、お疲れ様でした」
 こんなことを言われると、どうしたらいいのか分からなくなるので、正直やめてほしいのですが。
 結局答えないまま、私は脚を早めました。いきなり上がったスピードに主人が驚いたようですが、そんなことは知ったことではありません。こんな朴念仁にこれからもつきあわなければならないわが身を思うと、本当に溜め息が出ます。
 一路雪国の家を目指しながら、私はわざとスピードを上げて冬の空を翔けていきました。後ろで悲鳴をあげている主人——My Dear Santaにつきあえるトナカイなんて、私くらいしかいないってものです。



Thanks for your reading!
  I wish your happy X'mas and New Year!!


<2003年12月24日>



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