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書き散らした小説置き場。剣と魔法のファンタジー他いろいろ。
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 さえぎるものなど何もない、広い広い空の真ん中で。

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「はっしれそりよー、かっぜのよおにー♪」
 決して上手いとはいえない歌声が響いていました。家を出てからたっぷり2時間はクリスマス・メドレーを聞かされている私は、いい加減げんなりして後ろを振り返りました。
「ニコル、ちょっと黙っていてくれませんか。ご機嫌なのはいいのですが、こうも歌ってばかりいられると……」
「何で? トーンも一緒に歌おうよ」
 へろっとした笑顔の主人に、私は溜め息をつきました。
「それどころではありませんよ。橇を引くのはけっこう重労働なんですから」
 視線を前方に戻した私は闇の向こうをまっすぐに見つめました。クリスマスイブの今夜は、星明りがきれいな良い夜です。
「それで、進む方向はこちらで合ってますよね?」
「うん。さっき見つけたお客さんはこっちの方にいたけれど……あれ?」
 いきなり跳ね上がった主人の声と、前に重心が移った橇に、私は慌てて足を止めました。
「どうしたんですか、ニコル?」
 振り向くと、橇から半分ずり落ちかけた格好のまま、望遠鏡をのぞいている主人の姿が見えました。
「……お客さんが、見えなくなっちゃったんだ」
 橇から落ちかけていることにはまだ気づいていないらしく、主人はさらに身を乗り出して辺りをきょろきょろと見回しています。
「あれー、おっかしいなー……うーん」
 しばらく見失ったお客様を探していた主人ですが、元々が良くも悪くも切り替えの早い性格ですから、見つからないとなるとあっさり諦めてしまったようです。橇の座席に座りなおして、主人は満足そうに笑いました。
「うん。たぶん僕がプレゼントを渡すまでもなく、お客さんの望みが叶っちゃったんだね。それ自体はいいことなんだし、仕方ないから僕らももう帰ろうか」
「ニコル……そんな風にてきとうでいいんですか? 一応これはあなたの仕事でしょう」
「そうだねぇ。じゃあもう一度、新しいお客さんを探してみようか」
 再び主人が望遠鏡をのぞきこむことしばし。、ふいに主人が大声を上げました。
「トーン、見つけたよ! ここからはちょっと遠くなっちゃうけど……大丈夫?」
「ええ。それで、どちらに行けばいいんですか?」
「うん、あっちだ」
 主人の指はまっすぐ東を示しました。
「東、ですか。あっちの方は朝が早く来ますから、急がなくてはなりませんね。ニコル、振り落とされないよう橇にしっかりつかまっていてくださいね」
「うん、頼んだよ」
 主人が手綱を握り直したのを確かめてから、私はベルを鳴らして駆け出しました。


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