書き散らした小説置き場。剣と魔法のファンタジー他いろいろ。
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私の主人は大ボケです。
おまけにドジで、抜けてて、顔だって良いわけではありません。
あ、誤解の無いよう言っておきますが、”主人”とは言っても彼は私の夫というわけではありませんよ。ええ、断じて違いますとも。あんな甲斐性なし、たとえ頼まれたってごめんですとも。
ではなぜ私は彼を”主人”と呼ぶのか。疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。それはつまり——
「トーン!」
ばたばたばた、という騒がしい足音が天井に響いて、天窓が開きました。雪混じりの冷たい風と一緒に、見慣れた主人の顔がひょこりとのぞきます。その子供のようなしぐさに半分呆れながら、私は満面の笑みをたたえたその顔を見上げました。
「ニコル、気をつけてくださいね。また階段から落ちますよ」
「大丈夫、だいじょ……うわぁっ!!」
がたがたがたっ、とすごい音を立てて主人の身体が階段を落ちるのと、私が大きく溜息をつくのとは完全に同じタイミングでした。ああ、だから言ったのに。
「どこが大丈夫なんですか?」
天窓へ続く階段の昇り口にうず高く積まれたクッションに埋もれてしまった主人を掘り出して、私は呆れ果てた目を向けました。ちなみに、クッションはこういうこともあろうかと私が置いておいたものです。
「ああ、ありがとうトーン。助かったよ」
ぼさぼさ頭を振りながら主人は身体を起こしました。それから首にかけた望遠鏡を確かめてほっと息を吐きます。
「よかった、壊れてない」
一安心してようやく自分が階段から落ちた理由を思い出したのか、主人はにこにこ顔で私を見上げました。
「そうそう、聞いてよトーン。やっと今年のお客さん候補を見つけたんだ」
「それはようございました。今日はもう24日ですしね」
私の言葉に主人は大きく頷きました。
「うん、すぐ準備しなきゃクリスマスに遅れちゃうね」
「橇はいつでも出せますよ。あとはあなたの身支度だけです」
「わかった。じゃあすぐ着替えてくるよ」
そう言って自分の部屋に飛び込んだ主人は、しばらくして照れくさそうな笑みを浮かべて顔を出しました。
「……衣装、どこにしまったっけ」
私が溜息と同時に肩を落としたのも、無理はないことでしょう。
私の主人は、大ボケです。
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